バイオマス発電の課題はどこにあるのか?今後についても解説!
- 2025.04.01
- バイオマス発電

資源循環型社会を構築する再生可能エネルギーのひとつとして注目されているのが、バイオマス発電です。
再生可能エネルギーには太陽光や風力、地熱、水力がありますが、中でもバイオマス発電は木くずや食品加工廃棄物、廃材などの資源を用いた発電システムであり、日本でも広く普及し始めています。
本記事では、そんなバイオマス発電の課題と今後についてまとめました。バイオマス発電に関心を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
バイオマス発電とは何か?
バイオマス発電とは、どのような発電システムなのでしょうか。
バイオマス発電は、「有機性の資源であるバイオマスを用いた発電システム」のことで、木材などの乾燥系資源、食品加工廃棄遺物などの湿潤系資源、廃材などの資源が利用されます。
乾燥系資源
木質系(製材廃材など)、農業・畜産・水産系(農業残など)、建築廃材系(建築廃材)
湿潤系資源
食品産業系(食品加工廃棄物など)、農業・畜産・水産系(家畜排泄物など)、生活系(し尿など)
その他資源
製紙工場系(廃材やセルロースなど)、農業・畜産・水産系(でんぷんなど)、生活系(産業食用油)
バイオマス発電には、これらバイオマス資源を燃焼させて蒸気を発生させ蒸気タービンを回転させた上で発電を行う、「直接燃焼方式」があります。
そのほかには、「生物化学ガス化方式」、「熱分解ガス化方式」がありますが、どの方法もバイオマスが資源として使用されているところが特徴です。
バイオマスのメリットについて
バイオマス発電が注目されている背景に、導入するメリットが多数あるといった特徴があります。
近年、日本でも再生可能エネルギーが注目されるようになった背景と共に、バイオマス発電への注目度は年々高まっているのが現状です。
バイオマス発電のメリットを紹介しましょう。
環境への配慮
近年、よく耳にするようになったカーボンニュートラルですが、バイオマス発電はそれを実現できる発電方法として注目を集めています。
バイオマス発電はバイオマスを燃焼させる仕組みの発電方法ですが、資源となるバイオマスは成長の過程により大気中の二酸化炭素を吸収したものです。
そのため、それを燃焼させて発生する二酸化炭素はもともと大気中に存在していたものなので、実質増加しているわけではありません。
そのため、バイオマス発電は地球温暖化対策が可能な発電方法として注目されています。
廃棄物を有効活用できる
バイオマスとなる資源は、上記でお伝えしたように製材廃材や食品加工廃棄物、家畜排泄物などが含まれます。
これらは基本的に廃棄物として処理されてしまいますが、バイオマス発電はそれを、発電するための“資源”として有効活用できる発電方法です。
バイオマス発電は廃物処理におけるコストなどを軽減できる発電方法としても、注目されています。
バイオマス発電に課題はあるか?
バイオマス発電はメリットが多く、日本国内でも発電所が増加している傾向にあります。
一方、バイオマス発電にはまだまだ解決しなければならない課題が山積です。バイオマス発電の課題はさまざまありますが、その代表的なものをまとめました。
発電コストが高い
バイオマス発電の課題のひとつが、発電コストが高いといった問題です。
バイオマスを有効活用できるメリットはあるものの、それらを収集した上で発電所まで運搬するためにコストが発生します。
さらに、バイオマスによっては発電資源として使用するために加工が必要になるなど、ほかの再生可能エネルギーによる発電以上にコストが高くなってしまう傾向です。
バイオマス発電による原価構成において燃料費は全体の約7割を占めていると言われており、中でも原料搬出費や原料運搬費はそのコストの半数を占めている状況にあります。
発電コストについて何らかの打開策を見出すことが、バイオマス発電の今度の課題と言えるでしょう。
発電効率が低い問題
バイオマス発電は、ほかの再生可能エネルギーによる発電よりも、「発電効率が低い」ところが課題とされています。
例えば、水力発電の発電効率は80%と言われている中、バイオマス発電は最大でも25%と低い数値です。
太陽光発電も発電効率が低いことで知られておりバイオマス発電と大きく差がないものの、コスト面などの効率を考えた上でバイオマス発電が避けられる傾向にあります。
発電効率の改善に向けた対策は、喫緊の課題であると言えるでしょう。
バイオマス資源の安定供給が難しい
バイオマス発電は廃棄物を有効活用できるところがメリットですが、一方でその燃料となる資源の安定供給が難しい課題があります。
そもそも、バイオマス資源は供給量が安定していないこと、さらに品質に差があるところがデメリットと指摘されています。
燃料となる資源の品質が不安定であることは発電効率の低下につながり、もともと発電効率が低いと言われているバイオマス発電にとって深刻な問題です。
また、現在はバイオマス資源の多くは輸入に頼らざるを得ない状況であり、価格変動や供給量変動の影響が大きく長期的な発電計画が難しいといった懸念もあります。
バイオマス発電の今後はどうなる?
バイオマス発電の今後はどのようになっていくのでしょうか。バイオマス発電の今後を考える上で、まずバイオマス発電の現状について見ていきましょう。
再生可能エネルギーにおけるバイオマス発電の割合(2020年度)
3.2%、第6次エネルギー基本計画において2030年度までには3.7〜4.6%へ設定
政府の取り組み
固定価格買取制度(FIT)導入、補助金制度の導入
「一般木質・農作物残さ」分野における設備導入容量
2030年には、484万kWとなる見通しなど
近年、固定価格買取制度(FIT)導入、補助金制度の導入などによってバイオマス発電における新規導入量が増加傾向にあると言われています。
また「国産バイオマス発電の導入の見通し」によると、2030年にまでにはバイオマス発電導入量及びバイオマス発電量も増加していくと示唆されているなど、バイオマス発電は今後も日本国内で拡大していく可能性が大きいでしょう。
一方、上記でお伝えしているように今後の拡大には現状抱えている課題をクリアしていく必要があります。
自治体と連携や燃料の生産、供給体制の構築だけでなく、バイオマス資源の調達や運搬におけるコスト削減のための新たな資源の開発、調整電源として対応可能となる仕組みの構築など課題は山積です。
また、発電効率の低さを改善するための技術開発、新規参入における地域への説明や理解なども必要になってきます。
その中でも、独自の工夫により課題を解決するためのプロジェクトをスタートさせているバイオマス発電所もあり、今後の見通しは厳しいものとは言い切れません。
地球環境に配慮した発電方式であるバイオマス発電だけに、国内において今後どのようなかたちで広がっていくのか見守っていく必要があるでしょう。
まとめ
バイオマス発電は未だ再生可能エネルギーの中では割合が低いですが、そのメリットの周知や課題解決にむけた対策によって広がりを見せていくことでしょう。
まずはバイオマス発電における基本的な知識、さらにメリットとデメリットを理解しながら、どのように課題に対処していくべきか考えていく必要があります。
バイオマス発電の今後に期待しましょう。
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