バイオマス発電の歴史!日本ではどのくらい普及している!?
- 2024.06.25
- バイオマス発電

近年、二酸化炭素を排出しない「再生可能エネルギー」が注目されています。
そんな再生可能エネルギーの中でも、今後広がっていくと考えられているのがバイオマス発電です。
再生可能エネルギーというと太陽光発電や風力発電が話題に上がることが多いですが、生物資源を利用するバイオマス発電は注目されていくと考えられています。
本記事では、バイオマス発電の歴史を中心に、バイオマス発電についてまとめました。バイオマス発電をより知りたいといった方は、参考にしてください。
バイオマス発電の基礎知識
バイオマス発電の歴史を知る前に、バイオマス発電とはどんな発電なのか知っておきましょう。
バイオマス発電とは、バイオマス(生物資源)を利用した発電技術です。
バイオマスは、バイオ(生物)、マス(質量)が組み合わさった言葉で、植物や動物、また動物のフンから作り出された有機エネルギーを燃やす、または発酵させて発電される仕組みになっています。
バイオマス発電は世界的にも広がりを見せていますが、主に国内におけるバイオマス発電に使用されている燃料を下記にまとめました。
・一般木質バイオマス
製材端材、剪定枝など
・間伐材等由来の木質バイオマス
林地残材、間伐材など
・バイオマス由来のメタン発酵ガス
下水汚泥、家畜糞尿、食品残さなど由来のメタンガス
・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料
パーム油など
・建設資材廃棄物
リサイクル木材の建設資材廃棄物など
・廃棄物または、その他のバイオマス
廃食用油、黒液、木くず、紙など
これら燃料を使用した上で発電するシステムがバイオマス発電ですが、一般的な仕組みを簡単に下記にまとめました。
・バイオマス燃料を燃焼する
お湯を沸かす
・蒸気の力で蒸気タービンを回転させる
発電
例えば、木材をバイオマス燃料として使用する場合、木材を燃やすことで発生する蒸気で蒸気タービンを回転させることで発電する仕組みです。
バイオマス発電には主に下記の3種類があります。
熱分解ガス化方式
直接燃焼方式
生物化学的ガス化方式
それぞれ下記にて解説していきましょう。
熱分解ガス化方式
熱分解ガス化方式は、燃料を直接燃焼させることなく、蒸し焼きにする方式です。
燃料を蒸し焼きにすることで熱分解ガスが発生するため、そのガスでタービンを回転させて発電させます。
直接燃焼方式
直接燃焼方式は、その名の通り燃料を直接燃焼させる方式です。
木くずなどの燃料を直接燃焼させることで水が沸騰し、その蒸気の力を利用して蒸気タービンが回転するといった仕組みです。
生物化学的ガス化方式
生物化学的ガス化方式は、燃料を発酵させてメタンガスを発生させる方式です。
生ゴミ、下水汚泥、また家畜のフンなどのバイオマス燃料を発酵させてメタンガスを発生させ、ガスタービンを回転して発電させる仕組みです。
これら、バイオマス発電は二酸化炭素を新たに排出させないため、地球環境にも優しい「再生可能エネルギー」として注目されています。
バイオマス発電の歴史を知る
バイオマス発電は、上記でお伝えしたバイオマス燃料を使用する、地球環境に配慮した「再生可能エネルギー」のひとつです。
バイオマス発電はいつどのようにして利用されるようになったのか、バイオマス発電の歴史を下記にて解説していきましょう。
オイルショック
バイオマス発電は新しい再生可能エネルギーのひとつと認識されていますが、一方でその歴史は、1960年代から1970年代にまで遡ることができます。
じつはアメリカでは1960年代頃に林業で大量発生した廃材を利用するかたちで、バイオマス発電が行われていたと言われています。
そんなバイオマス発電が注目されるようになったのが、1973年のオイルショックでした。
オイルショックは産油国が原油価格を70%引き上げるなど、原油価格の想像を超える高騰に伴って行った世界的混乱で、日本国内でもトイレットペーパーの買い占めが起こるなど大きなニュースになったことで知られています。
とくに先進諸国は石油を数多くの分野で使用していたこともあり、当時は世界的に多大なる経済的混乱が発生しました。
オイルショックがいつ起こるかわからない、そもそも化石燃料への依存度が高いこの状況を是正しなければならない。
世界的に化石燃料からの脱却へ向けた動きが活発化したことにより、バイオマス発電など再生可能エネルギー、クリーンエネルギーが注目されるようになったのです。
1990年代にさらに注目度が高まる
石油依存の状態が問題視されたことにより、太陽光発電などだけではなく、生物資源を用いたバイオマス発電に高い注目が集まるようになります。
バイオマス発電には大きなメリットがあることが理解されていたものの、一方で問題視されるようになったのが、「バイオマス発電所の建設」、「バイオマス燃料の調達」でした。
発電所の建設は莫大なコストが発生しますし、バイオマス燃料を調達するためのコストも大きいため非現実的な発電方式として普及が足踏みしてしまいます。
結果、石油依存への脱却から始まったバイオマス発電への注目も下火となります。しかし転機が訪れたのが、1990年代です。
当時、地球温暖化が大きな問題として掲げられ、世界的に二酸化炭素など温室効果ガスの排出量削減が課題となります。
二酸化炭素の排出量の少ない太陽光発電がとくに注目を浴びますが、再生可能エネルギーとしてバイオマス発電も再び注目を浴びることとなったのです。
日本におけるバイオマス発電の歴史
現在、日本国内においてもバイオマス発電が普及し始めています。
日本におけるバイオマス発電の歴史も1973年のオイルショックが関係しており、その翌年の1974年、オイルショッを背景とした本格的な再生可能エネルギーへの取り組み「サンシャイン計画」がスタートしました。
当時の通商産業省(現・経済産業省)主導のもとで進められた「サンシャイン計画」では、太陽光発電、地熱発電、水素エネルギーなどが対象となったものの、バイオマスエネルギーも総合研究として進められることとなったのです。
現在のバイオマス発電は?
バイオマス発電への取り組み・普及が進んだヨーロッパを背景に、日本では2002年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定され、全国各地にバイオマス発電が広まることになります。
さらに、2009年に「バイオマス活用推進基本法」が制定されるなど、国産バイオマス燃料の導入なども始まりました。
さらに、バイオマス発電普及にとって大きな転機となったのが、2012年から始まった「固定価格買取制度(FIT制度)」でしょう。
太陽光発電などだけでなく、バイオマス発電も20年間の固定価格買取り対象となったことから、国内でもバイオマス発電所が増加することになりました。
バイオマス発電の現状
上記でお伝えしたようにバイオマス発電は、1973年のオイルショックを機に注目され、日本でも「固定価格買取制度(FIT制度)」における固定価格買取り対象になったことで広く導入されるようになりました。
一方、バイオマス発電の現状はどうなっているのか見ていきましょう。
資源エネルギー庁では再生可能エネルギーの導入状況を公開しており、2022年度における再エネの電源構成比は全体の21.7%(2,189億kWh)、バイオマスは全体の3.7%(327億kWh)とされています。
太陽光発電が9.2%と以前として高い比率を保っていますが、バイオマス発電は水力発電の7.6%に次ぐ高い水準となっていることがわかります。
さらに、2011年にはバイオマス発電の比率は全体の1.5%であったことを考えると、10年あまりで倍の構成比です。
2030年にまでは5%まで比率を高めたいといった案が示唆されており、日本国内においてバイオマス発電はさらに普及していくことが考えられます。
まとめ
バイオマス発電は、アメリカで古くから行われていた発電方式であり、オイルショックや地球温暖化などの影響により近年注目されるようになりました。
今後、日本でも広く普及していくことが考えられるバイオマス発電だけに、より注目度が高まることは間違いないでしょう。
本記事でバイオマス発電について、あらためて考えてみる機会にしてみてください。
-
前の記事
バイオマス発電とは!?メリット・デメリットを解説! 2024.06.25
-
次の記事
日本におけるバイオマス発電について!発電所の数や現状について解説! 2025.04.01